何も持たない者だからこそ、何者にでもなれる可能性、それは同時に、存在の否定でもあり、肯定でもあった。このまま何も無かったことに、無に帰したとしたら、自分は。だけど、少年に迷いはなかった。初めて手にした何かと共に、聖なる扉へと。
ハッピーバレンタイン。それは一年に一度、ヒカリにとって大切な日。そんな日をみんなで過ごそうと、チョコ作りにいそしんでいた。きっと、私は幸せなんだ。少女がこぼした一言。それは純粋な言葉であり、そして誰かに似た一言だった。私はみんなを連れて行きたい、幸せな世界へ。たとえ、絶望が待っていても。
誕生日を祝ってくれる人がいる。それはどれだけ幸せなことだろうか。少女はそれを知っていた。だからこそ、そんな少女の隣には一人の男がいたのだった。嬢ちゃん、教えてやってくれよ。生まれたときから世界の敵なヤツなんて存在しない、って。
アオトが訪れたのは常界の自分が生まれ育った家。あの日から誰も住むことのないその家だけが、時代から置き去りにされていた。だけど、僕たちは時を経て、いまこうしている。そして、僕たちは罪を背負い続ける道を選んだ。隣にはアリトンがいた。